エキシマレーザーを使用するレーシックブログ:161130
僕は子どもの頃を思い出すと、
いつも裸電球のうす暗いトイレが浮かんでくる。
ちり紙のかわりに新聞紙が置かれている…
その頃の僕は
色のない世界を生きているようだった。
どうして僕の家は貧乏なのだろう。
僕はお金持ちの家の子どもに生まれたかった。
チャイムの鳴る家、きれいなトイレ、
フリルの着いたブラウス、おかし、そして自動車…
僕は、いつも空想の世界で生きていた。
欲しい物は、何一つ手に入らない…
魅力的な品々は、次々と目の前に現われては素通りしていった。
田舎が嫌い、農業も嫌い!
僕は、地元の高校へ行かなかった。
少しでも家から離れたかった。
高校卒業後、
貧しいにもかかわらず、
父母は、僕の進学を許してくれた。
しかし、卒業したものの就職先も決まらず、
僕は家に戻ることになった。
田舎に戻った僕に、父母は何も言わなかった。
居心地も悪く、僕は地元で仕事を探した…
地元に就職して、ふた月が過ぎた頃、
僕は農家の長男と知り合った。
農家の長男、跡取り…
不安な材料ばかりだった。
やめよう、幸せになんてなれない…
やっぱり普通のサラリーマンがいいな。
「僕たち、お父さんやお母さんに
遊びに連れていってもらったことなんて一度もなかったよね」
お姉ちゃんと二人で、農家なんて嫌だと話していた。
この家で、幸せなことは何一つとしてなかった。
現に目の前には、
不幸の象徴である母親がいるではないか…
その時だった。
「農家はたいへんだけど、秋に米ができるとうれしいもんよ」
母親がぽつりと言った。
母親の口からではなく
母親のからだの奥から、
さらりと出てきた言葉のようだった。
それは、長い間、農作業をしてきた
からだから出てきた魂のひびきにも聞こえた。