レーシックを受けたメジャーで大活躍中の松坂選手ブログ:151111
10年ほども前のこと。
三重県の名張という町に、おいらたち夫婦は移り住んだ。
奥さんは西においらは東へと勤めに出かけ、
アパートには寝に帰ってくるだけという生活を
4年ほどおくった。
ある休日の10時、
おいらはぼさぼさに伸びた髪を切ってもらいに
近所の理髪店へと足を運んだ。
幸い待たされることもなく
短時間で済んだことに気をよくし、
おいらはアパートと逆の方向に足を向けてみた。
人がやっと通れるほどの細い路地を抜けると、
そこは初めて訪れる場所で、
「本町通り」と書かれた年代物の街灯が並ぶ
古びた商店街だった。
古い造り酒屋の軒先には杉玉が下がり、
おかし屋の店先は
何十年前と変わらぬ風情でおいらを迎えてくれた。
車や電車で通り過ぎたのでは
気づかない生活の匂いがそこにあった。
おいらは手作りのお豆腐屋さんの暖簾をゆらし、
湧水に冷える出来立ての豆腐をいただく…
あっという間に1時間が過ぎていた。
おいらは竹筒に入った「でっち羊羹」を
奥さんへの土産に意気揚々と少年のように帰った。
以来、おいらの中で旅とは、
旅行会社のパンフレットやガイドブックに載っているそれだけでなく、
ほんの少し本通りから逸れた
見知らぬ近所へのトリップのことも指すようになった。
お仕着せの他人任せの旅行も悪くない。
楽しいし、安全で気楽だ。
しかし
それは本物の旅だろうか?
おいらにとって
旅とは自分で行き先を決め、
自分の足でたどるものだ。
または、自分の意思であてもなく、
時間と空間の束縛から一時逃れて
湿りがちな心を乾かす逃避行のようなもの…
と、おいらは思っている。